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【ゲームレビュー】「CONTROL」は誰に向けられたゲームか

おはようございます。第一回は「CONTROL」です。

◇「CONTROL」の概要

1.「Alan Wake」や「Quantum Break」等で知られるRemedy Entertainment が制作したTPS・アクション・アドベンチャーです。

 

2.TPS+超能力による爽快なアクションが楽しめます。難易度設定は不可能で、アクション難度は少し高め(油断するとすぐ死ぬ)です。

 

3.世界的な伝奇系創作群「SCP Foundation」の影響をとても強く受けています。

 

◇アクションシューターが大好きなユーザーはこのゲームを楽しめますか?

はい、楽しめます。

ヘルスを回復する手段が「敵を倒す」しかないので「守るより攻める」が基本的なルールになります。優れたエイムや、適切なカバーが生存率を高めるため「銃撃戦の楽しさ」がしっかり存在しています。

ゲームを進めていくうちに投げモノやシールド、ダッシュや空中浮遊などを習得していき、その度に戦い方が劇的に変わっていくため、新鮮な体験を続けていくうちにクリアすることができます。

リロードが時限式であったり「MP」に相当するようなリソースがあるため、少し独特なプレイ感があり、慣れるまでに少しかかるかも知れません。時間経過でヘルスが自動回復しないという点も、アクションシューターとしては独特かも知れませんね。

◇これは世界観の謎を解き明かすのが大好きなユーザーのためにあるゲームですか?

はい、その通りです。

ゲームのスタートからゴールまで、謎に包まれた世界観を紐解き続けていくことになります。膨大な量の固有名詞、各所に散らばる無数のレポート、動画、音声記録…。それらを繋ぎ合わせて「ひとつの物語」を、プレイヤー自身が理解するために進行するゲームです。

ただし、非常に複雑怪奇で、SF+オカルトな概念が多々登場するため、そういった方面への理解力、想像力をかなり要求されます。例えばあなたは「情報を汚染し、人間を腐敗させ、認識へ悪性の影響を及ぼす波形の生命体」と言われて、それがどういうものかを想像することができますか? このゲームはそれを丁寧に噛み砕いて説明してくれるわけではないので、プレイヤー自身がイメージするしかありません。

また、作中の文章は何もかもが概念的であるために、翻訳にはかなり苦労されたように思われます。一部、文字通りに読み取っても意味がわからない記述も存在します。

 

◇これはホラーゲームですか?

いいえ。主人公が肉体、精神ともにパワフル、かつ心霊描写やグロテスクな描写などもほとんどないため、ホラーゲームではありません。

いくつか驚かせるための演出も用意されていますが、そういうもの(サブリミナルや不気味なSE)が特に苦手なプレイヤーでもなければ、恐怖に値しないものばかりです。何より、作中に登場するあらゆる敵は、銃と超能力で木っ端微塵に粉砕できます。

 

◇謎解き要素はありますか?

はい。ちょっとした謎かけが随所に用意されています。

いずれも難易度は低く、ゲームのテンポを阻害するようなものではありません。

 

オープンワールド要素はありますか?

はい。かなり自由に寄り道を楽しむことができます。

各所に用意されたサブクエストや、それに伴う物語的な体験のボリュームも相当のものです。人間ドラマと怪奇ストーリーのウェイトは「半々」といったところです。

 

◇これはSCPが大好きなファンのためにあるゲームですか?

いいえ。今回、このゲームを語るにあたって最も重要な部分がこれです。

SCPの熱心なファンではない場合、次の「◇」まで読み飛ばしていただいてオーケーです。ネタバレを避けつつ、ざっくりとこの問題を解説します。

 

「CONTROL」のメインストーリーをSCPファンに対して分かりやすく説明すると「ある収容サイトで起きた大規模な収容違反を解決する」というものです。特異なオブジェクトの能力を吸収して超能力を得る、という点では「Lobotomy Corporation」に似たところもあるかも知れませんね。

ただ、SCPにせよ、Lobotomyにせよ、その面白さの軸にあるのは、そういった「特異なオブジェクトのストーリー」です。

「CONTROL」でそういった物品は「パワーオブジェクト」や「変貌アイテム」と呼ばれますが、これらのオブジェクトにまつわる収容手順レポート、事件レポート等がとにかく薄味です。単純に文章量が少なすぎるとも言えます。

「こういった能力を持っている」

「いつどこで回収された」

「利用することでこういった能力を会得できる」

それくらいしか記載されていません。「収容手順」なんてそれらしい要項もありますが、そのほとんどが「特殊な手順は不要」「狭いところにしまっとくこと」「(編集済み)」くらいのものです。

SCPオマージュの作品と聞いて「エージェントとして数多のSCPたちとめくるめく奇妙な体験!」を期待していたプレイヤーは、肩透かしを喰らってしまいます。

もちろん、映像的な表現は素晴らしいもので「奇妙さを眼と耳で体験する」ことについては一定の満足を得ることはできます。しかし、やはりSCPの面白さの本質は、各オブジェクトにまつわるストーリー、それが超常現象なのか、世界のバグなのか、あるいは財団世界における物語(tale)を象徴するものなのか、読みながら推察し、はっと気づいたところで快感を得る。ホラーなのか、コメディなのか、ストーリーなのか、アンノウンなのか、読み終わるまで分からない。そんな中で作り手の創意工夫を味わい、文章の妙に酔う。そういった「要素のカオスさ」にあると思っています。

しかし「CONTROL」にはそれがありません。強いて言うならば、このゲームは、メインストーリーで追いかけることになる「ある一つのオブジェクト」にまつわる「事件レポートそのもの」です。

それがつまらない、というよりは「もっとたくさん読みたかった」という気持ちが先行します。テンポを損なってはならない「ゲーム」ならではの造りだったのかも知れません。とはいえ、SCPファンとしては「テンポを損なったとしても拘って欲しかった」と感じました。せめて本家SCP記事と同じくらいのクオリティ、ボリュームの読み物が10篇ほどあれば…という感じです。

ただ、SCP作品の一要素である「機動部隊」や「エージェント」の恰好良さが好きなファンにとっては、けっこうイケてる作品だと感じられるかも知れません。本作のエージェントは、どんなオブジェクトも、どんな異常生命体も、銃と素手で張り倒していきますからね。

 

◇もしかして、バカゲーですか?

いや、まさかそんな。

1時間ちょっとの映画を見ている時「ひょっとしてこれ、あんま真剣に見なくてもいいやつか?」と思う瞬間ってありますよね。

そういった瞬間がね、時折、ほんの少しだけありますけれども。

決してバカゲーではありません。とても真面目なゲームです。

ただ、やはりどうしてもフィンランド産のゲームなので。

北欧メタルを流さないことは不可能だったのだろうと思います。

(ちなみに、演出としては大成功しています。)

 

◇映画「キャビン」が好きです。どうですか?

雰囲気は似ていますが、ちょっと物足りないかも知れません。

 

◇「アリス マッドネス」が好きです。どうですか?

思いのほか気に入ると思います。

 

◇「CONTROL」をまとめると

・アクション 6/10

出来ることは多いのですが、ゲーム性は単調です。サイコキネシスでバリアを剥がし、銃やサイコキネシスで攻撃する、の繰り返し。隠れて銃撃戦に臨むよりは、前に出て力で押し切り、ヘルスを回復して、また前に出る。そういった戦法でガンガン進んでいくプレイヤーが多かろうと思います。

ただ、要所要所で「気持ちの良い無双」を体験できる場所が用意されているため、通してのアクション体験としては「まぁ面白かった」という印象が残るのではないでしょうか。映像的には、かなり理想的な「サイキック・アクション」という感じです。

ただ、基本的にボスがおらず「新しい能力の習得」と「その実践」を繰り返していくデザインは、後半になるほど退屈でネガティブに感じられました。

 

・アドベンチャー 7/10

全て屋内とはいえ、各エリアは表情豊かにプレイヤーを楽しませてくれます。寄り道のボリュームも相当のものですが、アクション部分のゲーム性が肌に合わないプレイヤーにとっては面倒さを感じてしまうこともあるでしょう。

意外にも成長要素がしっかりしており、銃主体で戦うのか、超能力を軸にしていくのか、ビルドを考えることができます。筆者は銃も格闘もシールドも使わず、浮遊しながら岩を投げつけるだけで全て攻略しましたが、それを「ビルドの多様性」と受け取るか、それとも「アクション性の破綻」と受け取るかは、プレイヤー次第でしょう。

 

・世界観、ストーリー 9/10

SCPの威を借りている部分もありますが、それを差し引いても圧倒的な映像、演出によって「奇妙な世界」を表現しきっています。ストーリーは抽象的で難解、明確な答えを用意しないものですが「そういうのが好き!」というプレイヤーにとってはポジティブな点でしょう。ただ、本家SCP記事のような、圧倒的な読後カタルシスはありません。

◇「CONTROL」は誰に向けられたゲームか

TPS+超能力バトルをカジュアルに楽しみたいプレイヤーにとっては、素晴らしいシーンを出力してくれる作品です。

難解で深淵、そして残酷で奇妙な世界観をくまなく体験したいプレイヤーにとっても、多くのアーカイブ、レポート、音声や動画が、それを満喫させてくれるでしょう。

「遊べる映画」としてゲームをプレイしたいユーザーにとっても、記憶に残る体験になると思います。

ただし、熱心なSCPファンにとっては、間違いなく物足りない作品です。

 

以上です。ありがとうございました。